🟥 特定技能制度シリーズ 第6回
特定技能1号の支援は自社でもできる?
中小企業が知っておきたい「自社支援」
と業務分担
特定技能1号の外国人を受け入れる場合、
登録支援機関に必ず依頼しなければならないのでしょうか?
特定技能1号の支援は、必ず登録支援機関へ委託する必要はありません。
受入れ企業が自ら支援を行う「自社支援」という方法もあります。
ただし、自社支援を選択する場合には、
「登録支援機関へ支払う費用を抑える」という点だけで判断するのではなく、
『企業自身が対応しなければならない支援範囲とは具体的に何か』を理解しておくこと
が大切です。
今回は、自社支援を選択した場合の企業側の考え方を整理します。
自社支援とは?
特定技能1号では、外国人が日本で安定して働き、生活できるようにするため、
「1号特定技能外国人支援計画」に基づく支援が必要です。
この支援は、受入れ企業自身が実施することも、登録支援機関へ委託することもできます。
本シリーズ第4回では、「支援計画」を取り上げ、外国人の生活や就労を支えるための
対応項目や支援方法を詳しく説明しました。
今回考えたいのは、
「これらを登録支援機関に頼まなかったら、誰が適切に対応するのか?」という点です。
自社支援では「社内の誰か」が担当する
登録支援機関へ委託すれば、契約した範囲の支援を外部へ任せることができます。
一方、自社支援を選択すると、その支援を社内で行う必要があります。
例えば、
入国時の送迎
住居を探す際のサポート
市区町村などでの手続きに関する支援
日本での生活についての説明
外国人からの相談への対応
定期的な面談
などについて、社内で担当者を決めて対応することになります。
特に初めて外国人を受け入れる中小企業では、
「人事担当者が空いているときに対応すればよい」
という考え方だけでは、継続的な支援が難しくなる可能性があります。
もう一つ、考えたいこと
ここは、特定技能制度を調べる企業にとって非常に重要なポイントです。
「外国人への支援」と「官公署へ提出する書類の作成」は、適用される制度が
別になっています。
例えば、
外国人の生活相談に対応したり、住居探しをサポートすることは「支援業務」です。
一方、
『在留資格の申請』『官公署へ提出する一定の書類作成』などは、行政書士法などの
別のルールが関係します。
【2026年1月1日から施行された改正行政書士法】では、
行政書士または行政書士法人でない者が「どのような名目であっても報酬を得て、
官公署へ提出する書類等を業として作成することはできない」とする規制について
明確化されました。
日本行政書士会連合会も、会費・手数料・コンサルタント料など、名目を問わず
対価を受け取って官公署提出書類を作成することについては、第三者となるものは
行うことができないと説明しています。
そのため、
「登録支援機関に委託すれば、特定技能に関する行政手続きまで全部やってもらえる」
とは、単純に考えないことが大切です。
支援業務と申請・届出は、誰が担当するのか
例えば
「特定技能1号の支援計画」は、在留資格の申請時に提出する書類です。
また、
「支援計画」に変更があった場合には、変更の届出も必要になります。
さらに、
特定技能所属機関や登録支援機関には、制度上さまざまな届出があります。
2026年4月以降、定期届出については、それまで3か月に1回であった提出が
年1回の提出になど、届出制度も変更されています。
このため、企業は「登録支援機関に頼むか自社でやるか」という二択だけ
に絞らず、段階的に戦略を立てて行動することが大切です。
「抜け漏れのない適切な運営に向けた社内体制の整備状況」
「制度に精通した知識のある従業員の確保に向けた教育」
「実務経験のある従業員の育成」
といった自社の状況を正確に捉えた上で、バランスの取れた企業方針を打ち出す
必要があります。
「登録支援機関に任せれば全部解決」ではない
登録支援機関へ支援を委託した場合でも、
受入れ企業がすべての責任から離れるわけではありません。
雇用契約を結ぶのは企業です。
実際の仕事を指示し、給与を支払い、職場の安全を確保するのも企業です。
登録支援機関は、企業に代わって外国人を雇用する会社ではありません。
あくまで、特定技能1号の外国人に必要な支援について、企業から委託を受けて
対応する存在です。
第4回でも説明したとおり、委託できる範囲は契約内容を確認する必要があります。
中小企業は「費用」と「社内負担」の両方で考える
では、自社支援と登録支援機関への委託、最初はどう選べばよいのでしょうか。
これは企業の規模や体制によって変わります。
例えば、
自社支援を検討しやすい企業
外国人対応ができる担当者がいる
外国人が複数いて、社内に支援体制がある
住居や行政手続きなどのサポートにも対応できる
継続的な相談対応ができる
このような企業であれば、自社支援を検討しやすいでしょう。
一方、
登録支援機関への委託を検討しやすい企業
初めて外国人を受け入れる
外国人の生活支援まで対応できる担当者がいない
多言語対応が難しい
社内の人手に余裕がない
という企業では、外部へ委託することで社内負担を抑えられる可能性があります。
大切なのは「誰に任せるか」より「誰が何をするか」
特定技能1号の受入れでは、
「登録支援機関に頼めば安心」「自社でやれば安い」と単純に決めるのではなく、
どの業務を、誰が、どこまで担当するのかを最初に整理することが大切です。
特に【2026年から行政書士法の改正も施行】されています。
「外国人への生活・就労支援」「在留資格申請」「官公署への届出」などを
一つの業務として考えるのではなく、それぞれの役割とルールを分けて確認することが、
企業にとっても分かりやすい受入れ体制につながります。
まとめ
特定技能1号の支援は、必ず登録支援機関へ委託すべきものではありません。
企業自身が支援体制を整えて、自社で実施することもできます。
ただし、自社支援を選ぶ場合は、
「登録支援機関への委託費がなくなる」ということだけで判断するのではなく、
「社内の誰が、どの業務を、継続して担当するのか」まで考える必要があります。
また、「外国人への支援業務」と「在留資格申請や官公署へ提出する書類作成」は
別の制度であり、対応を分けて考える必要があります。
つまり、【2026年の行政書士法改正】も踏まえ、契約や業務分担を決める際には、
「支援」「申請」「届出」
を分けて考えることが重要です。
特定技能制度を利用する企業にとっては、採用する外国人だけでなく、
採用後の支援体制を誰が担うのかまで、採用前に考えておくことが大切です。
参考資料
出入国在留管理庁「特定技能制度」
出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」
出入国在留管理庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」
日本行政書士会連合会「行政書士法第19条第1項及び第23条の3の改正について」
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